1、第十三条に規定するもののほか、不活性ガス消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。
一、全域放出方式の不活性ガス消火設備の噴射ヘッドは、不燃材料(建築基準法第二条第九号 に規定する不燃材料をいう。以下この号において同じ。)で造つた 壁、柱、床又は天井(天井のない場合にあつては、はり又は屋根)により区画され、かつ、開口部に自動閉鎖装置(建築基準法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備(防火戸その他の総務省令で定めるものに限る。)又は不燃材料で造つた戸で不活性ガス消火剤が放射される直前に開口部を自動的に閉鎖する装置をいう。)が設けられている部分に、当該部分の容積及び当該部分にあ る防護対象物の性質に応じ、標準放射量で当該防護対象物の火災を有効に消火することができるように、総務省令で定めるところにより、必要な個数を適当な位置に設けること。ただし、当該部分から外部に漏れる量以上の量の不活性ガス消火剤を有効に追加して放出することができる設備であるときは、当該開口部の自動閉鎖装置を設けないことができる。
二、局所放出方式の不活性ガス消火設備の噴射ヘッドは、防護対象物の形状、構造、性質、数量又は取扱いの方法に応じ、防護対象物に不活性ガス消火剤を直接放射することによつて標準放射量で当該防護対象物の火災を有効に消火することができるように、総務省令で定めるところにより、必要な個数を適当な位置に設けること。
三、移動式の不活性ガス消火設備のホース接続口は、すべての防護対象物について、当該防護対象物の各部分から一のホース接続口までの水平距離が十五メートル以下となるように設けること。
四、移動式の不活性ガス消火設備のホースの長さは、当該不活性ガス消火設備のホース接続口からの水平距離が十五メートルの範囲内の当該防護対象物の各部分に有効に放射することができる長さとすること。
五、不活性ガス消火剤容器に貯蔵する不活性ガス消火剤の量は、総務省令で定めるところにより、防護対象物の火災を有効に消火することができる量以上の量となるようにすること。
六、不活性ガス消火剤容器は、点検に便利で、火災の際の延焼のおそれ及び衝撃による損傷のおそれが少なく、かつ、温度の変化が少ない箇所に設けること。ただし、保護のための有効な措置を講じたときは、この限りでない。
七、全域放出方式又は局所放出方式の不活性ガス消火設備には、非常電源を附置すること。
1、令第十六条第一号の総務省令で定める防火設備は、防火戸とする。
2、全域放出方式の不活性ガス消火設備の噴射ヘッドは、次の各号に定めるところにより設けなければならない。
3、局所放出方式の不活性ガス消火設備の噴射ヘッドは、前項第二号イの規定の例によるほか、次の各号に定めるところにより設けなければならない。
一、防護対象物のすべての表面がいずれかの噴射ヘッドの有効射程内にあるように設けること。
二、消火剤の放射によつて可燃物が飛び散らない箇所に設けること。
三、次項第二号に定める消火剤の量を三十秒以内に放射できるものであること。
四、消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
4、不活性ガス消火剤の貯蔵容器(以下この条において「貯蔵容器」という。)に貯蔵する消火剤の量は、次の各号に定めるところによらなければならない。
5、全域放出方式又は局所放出方式の不活性ガス消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準の細目は、次のとおりとする。
一、駐車の用に供される部分及び通信機器室であつて常時人がいない部分には、全域放出方式の不活性ガス消火設備を設けること。
一の二、常時人がいない部分以外の部分には、全域放出方式又は局所放出方式の不活性ガス消火設備を設けてはならない。
二、不活性ガス消火設備に使用する消火剤は、二酸化炭素(日本工業規格K一一〇六の二種又は三種に適合するものに限る。以下この号、第二号の三及び次項第一号において同じ。)、窒素(日本工業規格K一一〇七の二級に適合するものに限る。以下この号において同じ。)、窒素とアルゴン(日本工業規格K一一〇五の二級に適合するものに限る。以下この号において同じ。)との容量比が五十対五十の混合物又は窒素とアルゴンと二酸化炭素との容量比が五十二対四十対八の混合物とすること。
二の二、全域放出方式の不活性ガス消火設備に使用する消火剤は、次の表の上欄に掲げる当該消火設備を設置する防火対象物又はその部分の区分に応じ、同表下欄に掲げる消火剤とすること。
防火対象物又はその部分 | 消火剤の種別 | |
---|---|---|
鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する部分、ガスタービンを原動力とする発電機が設置されている部分又は指定可燃物を貯蔵し、若しくは取り扱う防火対象物若しくはその部分 | 二酸化炭素 | |
その他の防火対象物又はその部分 | 防護区画の面積が千平方メートル以上又は体積が三千立方メートル以上のもの | |
その他のもの | 二酸化炭素、窒素、IG一五五又はIG一五四一 |
二の三、局所放出方式の不活性ガス消火設備に使用する消火剤は、二酸化炭素とすること。
三、防護区画の換気装置は、消火剤放射前に停止できる構造とすること。
四、全域放出方式の不活性ガス消火設備を設置した防火対象物又はその部分の開口部は、次のイ又はロに定めるところによること。
五、貯蔵容器への充てんは、次のイ又はロに定めるところによること。
イ、二酸化炭素を消火剤とする場合にあつては、貯蔵容器の充てん比(容器の内容積の数値と消火剤の重量の数値との比をいう。以下同じ。)が、高圧式のものにあつては一・五以上一・九以下、低圧式のものにあつては一・一以上一・四以下であること。
ロ、窒素、IG一五五又はIG一五四一を消火剤とする場合にあつては、貯蔵容器の充てん圧力が温度三十五度において三十・〇メガパスカル以下であること。
六、貯蔵容器は、次のイからハまでに定めるところにより設けること。
イ、防護区画以外の場所に設けること。
ロ、温度四十度以下で温度変化が少ない場所に設けること。
ハ、直射日光及び雨水のかかるおそれの少ない場所に設けること。
六の二、貯蔵容器には、消防庁長官が定める基準に適合する安全装置(容器弁に設けられたものを含む。第十三号ハ、次条(ハロゲン化物消火設備)第四項第四号イ及び第六号の二並びに第二十一条(粉末消火設備)第四項第三号ハ及び第五号の二において同じ。)を設けること。
六の三、貯蔵容器の見やすい箇所に、充てん消火剤量、消火剤の種類、製造年及び製造者名を表示すること。ただし、二酸化炭素を貯蔵する貯蔵容器にあつては、消火剤の種類を表示することを要しない。
七、配管は、次のイからニまでに定めるところによること。
八、二酸化炭素を常温で貯蔵する容器又は窒素、IG一五五若しくはIG一五四一を貯蔵する容器には、消防庁長官が定める基準に適合する容器弁を設けること。
九、二酸化炭素を零下十八度以下の温度で貯蔵する容器(以下「低圧式貯蔵容器」という。)は、次のイからニまでに定めるところによること。
十、低圧式貯蔵容器には、消防庁長官が定める基準に適合する放出弁を設けること。
十一、選択弁は、次のイからニまでに定めるところによること。
十二、貯蔵容器から噴射ヘッドまでの間に選択弁等を設けるものには、貯蔵容器と選択弁等の間に、消防庁長官が定める基準に適合する安全装置又は破壊板を設けること。
十三、起動用ガス容器は、次のイからハまでに定めるところによること。
イ、起動用ガス容器は、二十四・五メガパスカル以上の圧力に耐えるものであること。
ロ、起動用ガス容器の内容積は、一リットル以上とし、当該容器に貯蔵する二酸化炭素の量は、〇・六キログラム以上で、かつ、充てん比は、一・五以上であること。
ハ、起動用ガス容器には、消防庁長官が定める基準に適合する安全装置及び容器弁を設けること。
十四、起動装置は、次のイ又はロに定めるところによること。
イ、二酸化炭素を放射する不活性ガス消火設備にあつては、手動式とすること。ただし、常時人のいない防火対象物その他手動式によることが不適当な場所に設けるものにあつては、自動式とすることができる。
ロ、窒素、IG一五五又はIG一五四一を放射する不活性ガス消火設備にあつては、自動式とすること。
十五、手動式の起動装置は、次のイからチまでに定めるところによること。
十六、自動式の起動装置は、次のイからニまでに定めるところによること。
十七、音響警報装置は、次のイからニまでに定めるところによること。
十八、不活性ガス消火設備を設置した場所には、その放出された消火剤及び燃焼ガスを安全な場所に排出するための措置を講じること。
十九、全域放出方式のものには、次のイ又はロに定めるところにより保安のための措置を講じること。
十九の二、全域放出方式の不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するものに限る。)を設置した防護区画と当該防護区画に隣接する部分(以下「防護区画に隣接する部分」という。)を区画する壁、柱、床又は天井(ロにおいて「壁等」という。)に開口部が存する場合にあつては、防護区画に隣接する部分は、次のイからハまでに定めるところにより保安のための措置を講じること。ただし、防護区画において放出された消火剤が開口部から防護区画に隣接する部分に流入するおそれがない場合又は保安上の危険性がない場合にあつては、この限りでない。
十九の三、全域放出方式のものには、消防庁長官が定める基準に適合する当該設備等の起動、停止等の制御を行う制御盤を設けること。
二十、非常電源は、自家発電設備、蓄電池設備又は燃料電池設備によるものとし、その容量を当該設備を有効に一時間作動できる容量以上とするほか、第十二条第一項第四号ロ、ハ、ニ及びホの規定の例により設けること。
二十一、操作回路、音響警報装置回路及び表示灯回路(次条(ハロゲン化物消火設備)及び第二十一条(粉末消火設備)において「操作回路等」という。)の配線は、第十二条第一項第五号の規定の例により設けること。
二十二、消火剤放射時の圧力損失計算は、消防庁長官が定める基準によること。
二十二の二、全域放出方式の不活性ガス消火設備(窒素、IG一五五又はIG一五四一を放射するものに限る。)を設置した防護区画には、当該防護区画内の圧力上昇を防止するための措置を講じること。
二十三、第十二条第一項第八号の規定は、不活性ガス消火設備について準用する。
二十四、貯蔵容器、配管及び非常電源には、第十二条第一項第九号に規定する措置を講じること。
6、移動式の不活性ガス消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準の細目は、前項第五号イ、第六号ロ及びハ、第六号の二、第六号の三(窒素、IG一五五及びIG一五四一に係る部分を除く。)、第七号(同号ロ(ロ)及びハ(ロ)を除く。)、第八号(窒素、IG一五五及びIG一五四一に係る部分を除く。)並びに第二十二号の規定の例によるほか、次のとおりとする。
一、移動式の不活性ガス消火設備に使用する消火剤は、二酸化炭素とすること。
一の二、ノズルは、温度二十度において一のノズルにつき毎分六十キログラム以上の消火剤を放射できるものであること。
二、貯蔵容器の容器弁又は放出弁は、ホースの設置場所において手動で開閉できるものであること。
三、貯蔵容器は、ホースを設置する場所ごとに設けること。
四、貯蔵容器の直近の見やすい箇所に赤色の灯火及び移動式不活性ガス消火設備である旨及び消火剤の種類を表示した標識を設けること。
五、火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所以外の場所に設置すること。
五の二、道路の用に供される部分に設置する場合にあつては、屋上部分に限り設置できること。
六、ホース、ノズル、ノズル開閉弁及びホースリールは、消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
1、次の表の上欄に掲げる防火対象物又はその部分には、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のうち、それぞれ当該下欄に掲げるもののいずれかを設置するものとする。
防火対象物又はその部分 | 消火設備 |
---|---|
令別表第一(十三)項ロに掲げる防火対象物 | 泡消火設備又は粉末消火設備 |
別表第一に掲げる防火対象物の屋上部分で、回転翼航空機又は垂直離着陸航空機の発着の用に供されるもの | 泡消火設備又は粉末消火設備 |
別表第一に掲げる防火対象物の道路(車両の交通の用に供されるものであつて総務省令で定めるものに限る。以下同じ。)の用に供される部分で、床面積が、屋上部分にあつては六百平方メートル以上、それ以外の部分にあつては四百平方メートル以上のもの | 水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備又は粉末消火設備 |
別表第一に掲げる防火対象物の自動車の修理又は整備の用に供される部分で、床面積が、地階又は二階以上の階にあつては二百平方メートル以上、一階にあつては五百平方メートル以上のもの | 泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備 |
別表第一に掲げる防火対象物の駐車の用に供される部分で、次に掲げるもの 一 当該部分の存する階(屋上部分を含み、駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)における当該部分の床面積が、地階又は二階以上の階にあつては二百平方メートル以上、一階にあつては五百平方メートル以上、屋上部分にあつては三百平方メートル以上のもの 二 昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のもので、車両の収容台数が十以上のもの | 水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備 |
別表第一に掲げる防火対象物の発電機、変圧器その他これらに類する電気設備が設置されている部分で、床面積が二百平方メートル以上のもの | 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備 |
別表第一に掲げる防火対象物の鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する部分で、床面積が二百平方メートル以上のもの | 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備 |
別表第一に掲げる防火対象物の通信機器室で、床面積が五百平方メートル以上のもの | 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備 |
別表第一に掲げる建築物その他の工作物で、指定可燃物を危険物の規制に関する政令別表第四(以下この項において「危険物政令別表第四」という。)で定める数量の千倍以上貯蔵し、又は取り扱うもの
指定可燃物 | 消火設備 |
---|---|
危険物政令別表第四に掲げる綿花類、木毛及びかんなくず、ぼろ及び紙くず(動植物油がしみ込んでいる布又は紙及びこれらの製品を除く。)、糸類、わら類、再生資源燃料又は合成樹脂類(不燃性又は難燃性でないゴム製品、ゴム半製品、原料ゴム及びゴムくずに限る。)に係るもの | 水噴霧消火設備、泡消火設備又は全域放出方式の不活性ガス消火設備 |
危険物政令別表第四に掲げるぼろ及び紙くず(動植物油がしみ込んでいる布又は紙及びこれらの製品に限る。)又は石炭・木炭類に係るもの | 水噴霧消火設備又は泡消火設備 |
危険物政令別表第四に掲げる可燃性固体類、可燃性液体類又は合成樹脂類(不燃性又は難燃性でないゴム製品、ゴム半製品、原料ゴム及びゴムくずを除く。)に係るもの | 水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備 |
危険物政令別表第四に掲げる木材加工品及び木くずに係るもの | 水噴霧消火設備、泡消火設備、全域放出方式の不活性ガス消火設備又は全域放出方式のハロゲン化物消火設備 |
2、前項の表に掲げる指定可燃物(可燃性液体類に係るものを除く。)を貯蔵し、又は取り扱う建築物その他の工作物にスプリンクラー設備を前条に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したときは、同項の規定にかかわらず、当該設備の有効範囲内の部分について、それぞれ同表の下欄に掲げる消火設備を設置しないことができる。